【追悼】周藏さん、ありがとうございました


当団体の「石部棚田プロジェクト」で、大変お世話になった松崎町石部地区棚田保全推進委員会の髙橋周藏元会長が、令和元年5月18日の午後0時50分にご逝去されました。
謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

(以下、親しみを込めて「周藏さん」と呼ばせてください)

周藏さん 81歳の誕生日で、ちょうどその日は令和初の田植えの日。
しかも、田植えが始まろうとするちょうどその時刻に息をひきとられたそうです。

周藏さんは、2000年に地域のリーダーとして、90%以上が放棄された石部棚田の復田を指揮し、2017年まで石部棚田の保全活動の中心として尽力しました。

いや、「尽力した」というような生半可な言葉では表現できません。
命の炎を燃やしながら、自分という個を捨てて、地域の財産である棚田を守るために「戦った」という方が、周藏さんにはふさわしいかもしれません。

私たち棚田ネットワークは、2012年から石部棚田の8枚の耕作されていなかった田んぼをお借りして、周藏さんの指導のもと石部に伝わる伝統的農法での稲作体験を行ってまいりました。

時に厳しく、そして時にやさしく叱咤激励されながら、棚田でたくさんの大切なことを叩き込まれました。
最初は、周藏さんが何でこんなに厳しく言うのか分かりませんでした。でも、通い続けて行くうちに、その意味がだんだん分かってくるのです。そして周藏さんの薫陶を受けた人たちの多くが、「結局、俺たち周藏チルドレンなんだよね」といいながら、周藏さんの教えを守っていこうと思うようになるのです。

 

2016年度の会長最後の年には、周藏さんは体の不調を押しながら、復田の記録を後世に残すための冊子作りを私たちに依頼しました。

私たちは、周藏さんの最後の大仕事であり、集大成なのだという気持ちを受けとり、真正面からぶつかり合いながら妥協せずに取り組みました。

その冊子『石部棚田 復田の記録』は、周藏さんのメッセージとして葬儀の際に、参列者に配布されたそうです。

周藏さんが令和という新しい時代のまさに田植えの日に逝かれたのは、「これからの石部棚田を頼むよ」という想いが込められていると思います。

私たちは、これからも周藏さんの想いを忘れずに、石部棚田の保全に協力して行きたいと思います。

周藏さん、本当にありがとうございました。
そしてこれからも棚田の上から、私たちの活動を見守っていてください。
 

令和元年 5月

石部棚田プロジェクト
周藏チルドレン 久野大輔・高桑智雄